衝突銀河Arp 244 アンテナ銀河(NGC4038/39)は、PENTAX KPと300mmレンズ総露光52分で写るのか?PixInsightのWBPP〜MASまでの画像処理メモと、冬のプチ遠征撮影で役立つ工夫の記録。
2026-03-05 総露光時間88分に延長し、触角が延びた!がまだまだ足りない?フラットフレームの差し替え、PixInsight処理の変更点のまとめを追加
快晴の夜、観測地に入ってから空の光害状況を見て、その場で条件の良い対象を探して撮像することにした。
選んだのは次の2天体:
- 沈みかけているオリオン座のリゲルの近く
魔女の横顔星雲(IC2188, NGC1909)
- 東の空に上ってきたからす座の衝突銀河
アンテナ銀河(NGC 4038/39、Arp 244)

(画面の一部を拡大して表示)
アンテナ銀河を総露光52分・104コマ撮像
Arp銀河*1の撮像では、指先の感覚が鈍るため手袋を脱いで操作。
不思議なことに寒さはあまり感じず、高揚感の中で集中して撮像を続け、結果として104コマを確保。
気がつくと午前3時。
霜降りカメラバッグに機材をおさめて撤収する。
結果にはひとまず満足。もう少し露光を積んで、淡いテイルを明瞭に捉えたい。
対象天体の諸データ
| NGC # | 赤経 | 赤緯 | 実視等級 | 視直径 | Arp # | その他の名称等 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 4038 | 12h01.9m | -18°52' | 10.5 | 11.2' x 5.9' | Arp 244 | アンテナ銀河 |
| 4039 | 12h01.9m | -18°53' | 10.3 | 9.8' x 4.5' | Arp 244 | アンテナ銀河 |
使用機材
- PENTAX KP + O-GPS-2 アストロトレーサー使用 30 s露光
- サードパーティ製USB-C電源ケーブルでモバイルバッテリーからPENTAX KPへ給電
- PENTAX FA645 300 mm F4 {IF} ED
+ PENTAX 645-Kマウントアダプター
+ レンズヒーター 絞り開放(F4)
撮像条件
対象天体は、その場ではライブビューによるファインダー画像でも、撮像画像でも確認できない。
そのためガイド星の位置を頼りにフレーミング。
- 撮像枚数:104コマ
- 総露光時間:52分。
PixInsight 1.9.3による画像処理フロー
- WBPP 1x drizzle integration
- blurXTerminator
- noiseXTerminator
- Dynamic Background Extraction
- image solver
- Spectrophotometric Color Compensation
- SCNR
- Multiscale Adaptive Stretch
- Annotate Image
2026-0305 アンテナ銀河を追加撮像(総露光88分・176コマ)でどう変わった?

フラットフレームを差し替えたことで、背景ノイズは若干減少した。
「触角」が細く弧を描いて伸びている様子は、WBPP終了時から明確に視認できた。背景処理はABEでなるだけ処理途中での情報量ロスが少なくなるよう心がけて行った。星画像と銀河画像とに分画して処理を進めたものを合成した画像では、淡く描出されるにとどまっている。充分な描出のためには背景とのS/N比にまだまだ改善が必要であると考えられる。処理テクニックの問題のほかに、雲間で撮像した雲のノイズの乗ったフレームの選別も必要かもしれない。また、まだシーズン途中であるので晴れている晩にさらに露光量を増やして、触角の輪郭がくっきりするかどうかも確認したい。
大きなサイズの触角部分がシグナルとして認識され、背景のムラとして塗りつぶされないことを意図して。設定変更箇所は以下の2点:サンプル生成Box sizeを100に、Interpolation Functionの次数を1とした。
星の色の調整(SPCC)は、starnet 2で生成した星画像に対して行った。
撮像条件
撮像は前回と同様に行った(ガイド星の位置を頼りにフレーミング)。
- 撮像枚数:176コマ(72コマ追加)
- 総露光時間:88分(36分追加)。
PixInsight 1.9.3による画像処理フロー
- WBPP 2x drizzle integration
- blurXTerminator
- noiseXTerminator
- Automatic Background Extractor (Dynamic Background Extractionにかえて)
Sample generation項の Box size(デフォルトでは5に設定)を100に変更、
Interpolation and Output項のFunction degree (デフォルトでは4に設定)を1に変更して実施
- starnet 2で星画像と銀河画像とに分画して別々に処理(前回から変更)
星画像の処理
- image solver
- Spectrophotometric Color Compensation
- Generalized Hyperbolicarcsin Stretch
銀河画像の処理
- Multiscale Adaptive Stretch
画像合成
- Pixel Mathで星画像と銀河画像を足し算
その場で対象を探すのに役に立ったもの
待ちに待った快晴の夜でも、
- 目当ての天体がちょうど光害に沈んでいる
- 雲台の可動域に入らない
ということは少なくない。
For those of us whose survival under the clouds is allowed only for a brief time, selecting the most favorable target available at that moment may seem like a reckless leap of faith—yet it may well be the ultimate way to make the most of an astronomer’s life. (限られた時間、大気圏の底での生存を許されているだけのわれわれにとって、その場で最も条件の良い対象を選んで撮像するのは、いきあたりばったりの綱渡りのようでも、天文生活を最適化する最高の戦略といえるだろう。 N&g Arts, 2026)
最高の戦略決定に頼りになったのが、
無料ながら非常に高機能な星図ソフトウェア。
屋外持ち出し用の小型端末
であった。
CdCの魅力とカスタマイズ
CdCの強みは、
- 星座早見から詳細星図まで自由に拡大縮小できる
- 方角や傾きに合わせて表示できる
- 自分仕様にカスタマイズできる
ことである。
特にArp銀河の所在をデフォルトで星図に表示できるソフトウェアは少ない(と思われる)。筆者はCdCをカスタマイズし、カタログとしてデータベースに入れて表示させている。
338個のArp銀河が、実は夜空のあそこにもここにも存在することがわかって、実に好奇心をかき立てられる。
冬の屋外端末運用メモ
屋外で使う端末には
- バッテリ低温問題
- 夜露・結露
- (夏には)CPU暴走
などの不安もある。
夜露対策として、百均に売っているファスナー付きビニール袋に入れて操作している。
手袋ごしでもタッチが利いて、意外に便利である。
また、CdCの白いフレーム部分がまぶしいため、赤色シートでマスクすると快適になった。
