夜空を彩る星座に登場するギリシア神話の神々のイラスト集であり、宇宙芸術の原典、「フラムスチード天球図譜」の古書を入手した。
《フラムスチード天球圖譜》を特にお勧めしたいのは
- 星の神話の世界に埋没したい方
- 天文の教養を深めたい方
- 肉眼で見える星と星座を身につけたい方
- 宇宙芸術の至宝、サー・ジェームス・ソーンヒル作品を鑑賞したい方
いまやスマホやPad・タブレット系端末を空にかざせば、見ている星々を画面に映し、名前まで確認できるARアプリの時代だ
よほど天文に興味のある方でも、冊子体の星図はもはやオワコンの存在かもしれない。
そういう時代になぜ《フラムスチード天球圖譜》なのか
フラムスチード天球図譜は、Wikipediaによると
王室天文官ジョン・フラムスティードの観測結果に基づいて制作され、彼の死後、1729年に出版された星図。(中略)
グリニッジから観測できる主な 26 星座の図を、ジェームズ・ソーンヒルのロココ調のイラストと共に掲載している。
とある。日本では、恒星社厚生閣から、何度か復刻されて現在にいたっている。
新刊本は美術書の体裁で、お値段も決してお安くはない。
図書館で拝見しようと県内公立図書館を横断検索しても見つからないほどの稀少な資料である。
筆者は、88星座のラテン名はそらんじていても、実際の夜空でどこに配置されているのか、よくわからないところが多い。
全天恒星図としてまた天の壁画集として,国民の教養書となる一方,遠洋航海する航海士たちの慰めとさえなった
とされる本書で、星の配置を物語で身につけたいと念願するばかりであった。
訳者のお一人は
ここに譯(訳の旧字体)された星圖(図)帖には、いとも美しいギリシア神話に活躍した神々や勇士の姿が、具軆(体)的に頭上に再現されてゐ(い)るのである。この星圖(図)を頼りにして、我々が天空を見る時に、我々は直接にすぐれたる想像力の持ち主たるギリシアの精神に觸(触)れることができるのである。ヘルクレス星座を見ては(中略)勇者ヘルクレスを思ひ、ペガスス座を仰いでは、(中略)天馬を思ふ。この天と地が一体となり、未来もなく過去もなくたゞひたすらに詩の世界星の世界に逍遙することは、比類のない喜びである。この境地に於いて、やゝともすれば固化しがちな精神の緊張をほどき、明日の文化を創造するに足る豊かな想像力が生まれるのである。(昭和18年7月発行版の解説 フラムスチードと現代の星座 薮内清(東方文化研究所)より)
と書いておられる。「比類のない喜び」と「明日の文化の創造」を求めるなら、本書を手にする価値がある。
筆者なりに特筆すべき点は次の5つ:
- 星座にまつわるギリシャ神話は本書には掲載されていない
- ページを開くとフラットな星図となるような特殊な製本がなされている
- 星座名はフランス語表記である
- 大熊座のクマが右を向いているのは図や写真を配置する時に北を上にする不文律による
- ラインアートや星のプロットに始まる宇宙芸術は、科学と芸術を結びながら現在の天体写真にまでつながることがわかった
もうひとつの「なぜ《フラムスチード天球圖譜》なのか」 ー 亡父は「フラムスチード」を鉄筆でなぞったわけではなかった
先日小学校4年生向け星座絵図プリント「星座の研究」を、亡父の遺品の中から見つけた。
昭和40年代はじめの頃に、担任の学級に配った謄写版の夏休みの宿題帳*1の予備分を渡された記憶は残っている。
子どもに興味を引くようなものを持たせて、それに夢中になり始めると見るや勉強のじゃまになると言って取り上げるという精神的虐待を受け続けた。
およそ50年も前には教育熱心と褒められたものであったのか、経済的に自立してから、パソコンを購入するときでさえ、過干渉を受けたことを思い出した。
律儀な書き文字をあたらめて読み返し、いくつか気になることがあった。
夏の北の星空(p. 3)では天の北極のま上の子午線を越えて西に沈みつつあるおおぐま座が、星座の説明のページ(p. 4)では秋から冬の(午後8時から9時ごろの)体勢で描かれていることもその一つで、


もし外に出てスケッチしたら、こういうレイアウトにはならなかったはずでは?と訝しんだ。大ぐまがイルカのように、こぐまは大きなネズミのように描かれているのも、亡父にしては下手すぎるように見える。
《フラムスチード天球圖譜》を取り寄せると、なにか手がかりが見つかりそうに期待したものの…
コノぶろぐノ別ノ記事二掲載シテイル天体画像ハ、正シイ向キ二直スベキダ
という気づきが、亡父からのメッセージなのかもしれない。
*1:「実際に夜空で見てみよう」と紹介されているのは、夏の15星座、おおぐま座、こぐま座、りゅう座、いるか座、わし座、こと座、はくちょう座、へびつかい座、へび座、かんむり座、しし座、かに座、ヘルクレス座、さそり座、いて座である。
