風の冷たい快晴の日和となった本日、かねてネット注文していた望遠レンズ引取りのため、チェーン店の最寄り店舗に出向く。
持ち込んだマウントアダプターとPENTAX KPでチェック。と言っても、筆者のチェックポイントは無限遠を越えてフォーカスリングが回ることと星が丸く結像することの2点である。星像試験(のかわりに電柱の碍子に映った太陽像を見なさいと小学生の頃に読んだことがある)の方は手持ちでの確認には限界があるものの、悪くない印象である。
永らくお世話になったレンズは、レンズ面以外の部分はシリコンクロスで、鏡胴と濁って発音するよりも鏡筒と澄み切って発音するのが適切なくらい、心を込めて磨き上げた。なのに、係の店員さんが気にされているチェックポイントは、もっぱら中玉の若干のクモリで、ライトで反対側から照らしてチェックされている。―演出も入っているかと思うが―初期提示買取価額をなんとか頑張って高くしてもらって、いわゆる両者得した形にメンタルケアされて帰ってくる。
宵のうち空が雲で覆われる時間帯もあったが、200 mm F4 for 6X7 と2本セットで担いで、重さに辟易しながら観測地に向かう。
バックネットの金網や側溝のグレーチングなどの磁界を乱しそうなものから距離を取って機材を展開したおかげか、アストロトレーサーのキャリブレーションは最短時間で終わらせることができた。
早速最も暗い方角の東の空に上ってきつつあるオリオン座大星雲を視野に入れる。
フォーカスは一旦無限遠を越えて少し戻して合わせることができ、申し分ない。200 mm F4や50 mm F1.4は無限遠点を越えて行き過ぎることがない分、ほんとに正しい結像位置の数ミクロン手前でとまってしまっているようなやり残し感がつきまとう。これがレンズの個体差なのか、設計仕様なのか(はたまたマウントアダプタとの相性という総合的な誤差なのか)は判然としない。
レンズが一本増えて、現有のレンズの特性についても少し違った視点から比較して見られるようになった。
アストロトレーサーの効いた状態で、ISO 1600, 絞り5.6, 露光時間30秒で撮ると、星がブレて写るのにがっかりした。しかし、露光開始時にミラーが跳ね上がってから5秒ほど黒羅紗の布切れでレンズ開口部を覆っておくとブレの殆どは消失することから、ミラーショックによる振動が原因と判明した。モニタで見える星や星雲の色味はくっきり鮮やかで、好感が持てる。夢中でM42、M41、バラ星雲を撮像して二六四○時に撤収。
しかも
これまで多くの撮影で、Image Solvingをかけられるようにするための前処理としてnoiseXTerminatorとblurXTerminatorが必須となる状況が続いていた。いわば、ブレボケだらけの星像写真の背景に、できあいの色塗り(Multiscale Gradient Correction)をし、輝点の形を丸く調え(noiseXTerminatorとblurXTerminator)ておいて、できあいの正しい色味で塗りつぶして(Spectrophotometric Color Correction)コスメティックリメイクをしていたことになる。
今夜の結果をインテグレートもしていないうちから勝利宣言するのは早すぎるけれど、一枚一枚がそれぞれシャープでブレのない星像に撮れた手応えがある。←やはり時期尚早でnoiseXTerminatorとblurXTerminatorをかけずにplate solvingには進めないのであった。
数年前にK-70を死蔵するだけに終わったのは、この境地にいたるのがそう簡単ではないためともいえる(し、クライアントのお相手をする仕事柄、いまのように自分の裁量で動けなかったということもある)。
次への課題としては、頑丈なGitzoの中古雲台の紛失したカメラ固定ネジの手配、予算が許すならば、無限遠を越えてフォーカスリングを回せる200 mm PENTAXブランドEDレンズとの比較検討であろうか。