PENTAX KPと300mmレンズで撮るボーデの銀河・葉巻銀河(M81 NGC 3013・M82 NGC 3034 Arp337):総露光時間87分→120分でどう変わる?ソンブレロ銀河(M104)にも挑戦。冬の天体撮影と画像処理(PixInsightのWBPP〜MASまで)のメモ。
2026.02.27 総露光時間120分→140分の変化を追加
20分の増加で意外にも見えてきたものは…
観測当夜撮像した4天体(撮影順):
例によって、観測地に入ってから、その場で条件の良い対象を探して撮像した。
- 沈みかけているオリオン座のリゲルの近く
魔女の横顔星雲(IC2188, NGC 1909):撮像開始時刻22時すぎに観測地真南の光害の少ないところにある。(総露光時間の蓄積中)
- 北の空のおおぐま座の相互作用銀河
ボーデの銀河(M81 NGC 3013)と葉巻銀河(M82 NGC 3034, Arp 337)(先月撮像した177コマ(✕ 30 s)に64コマ追加して総露光時間120分に到達)
- 東の空のからす座の衝突銀河
アンテナ銀河(NGC 4038/39、Arp 244)(総露光時間の蓄積中)
- 南東の空のおとめ座のソンブレロ銀河 からす座の台形からアプローチ
ソンブレロ銀河(M104)
使用機材
- PENTAX KP + O-GPS-2 アストロトレーサー使用 30 s露光
- サードパーティ製USB-C電源ケーブルでモバイルバッテリーからPENTAX KPへ給電
- PENTAX FA645 300 mm F4 {IF} ED
+ PENTAX 645-Kマウントアダプター
+ レンズヒーター 絞り開放(F4)
撮像条件
対象天体が明るいメシエ天体であると、撮像直後のプレビューで確認できて安心である。
ライブビューによるファインダー画像では視認できないため、周辺のガイド星の位置を頼りにフレーミング。
- 撮像フレーム数:ボーデの銀河・葉巻銀河 64コマ(F4開放、露光時間32分;累積241コマ、総露光時間120.5分)、ソンブレロ銀河46コマ(F4開放、露光時間23分)
撮像環境
PixInsight 1.9.3による画像処理フロー
- WBPP 1x drizzle integration
- blurXTerminator
- noiseXTerminator
- Dynamic Background Extraction
- image solver
- Spectrophotometric Color Compensation
- SCNR
- Multiscale Adaptive Stretch
- Annotate Image
ボーデの銀河・葉巻銀河 総露光時間120.5分と88分との比較
観測点から北東に山を隔てて都市部があり、光害が著しい。先月撮像したとき、M81/M82はその光害ゾーンを抜けたかどうかというあたりで、カブりのためにISO 800に設定していた。
今回は光害エリアからは最も離れたところに上ってきているので、強気でISO 3200に設定し、背景のカブりに負けないシグナルを確認したのでそのまま64フレーム撮像して、露光時間を32分増やした。
総露光時間の33%増加にともなう階調のリッチネスの増加*1が如実に現れたのは
- M81の渦状腕が、やっと見えるようになるくらいの淡さ(87分バージョン)から、円盤と一体化して輪郭として見える(120分バージョン)ようにはっきり描写されている
- M81の円盤内部の渦巻くような微細な構造が明瞭に見られる
- さらに円盤の外縁部の外側に淡い雲のような構造が見え始めてきている(後述の“気配”?にしては早すぎる?)
であった。
反面、M82は露出オーバー気味になってしまい、また中央の星形成領域の描出も難しいようである。
この話、まだまだ120分では終わらない…
これが、露光時間を増やした効果なのか!と感激していたら、chatGPTからまだまだ序の口と、以下のようなアドバイスが:
(総露光時間)2時間:腕が“見える”
5時間:腕が“繋がる”
8時間:腕の外周に“気配”が出る
12時間:背景にIFN*2が“出現”
下記論文のFig. 1を見ながら、いつか“出現”する日が来ることを夢見て、まずは5時間を目指そう*3とニヤニヤする。
www.astroexplorer.org
ボーデの銀河・葉巻銀河 総露光時間140分と120.5分との比較)(2026-02-27追記)
ライトフレーム(ISO1600で30 s露光)を40枚追加してPixInsightで処理した。今回は上を北にしてM81の同じ部分を拡大して比較した(左:総露光時間140分;右:120.5分)。ここでお断り:140分バージョンは2xのドリズルをかけたものをピクセル等倍で、120.5分バージョンは1xのドリズルをかけたものを2倍に拡大してお見せしている。

- 円盤の中の微細な渦が詳細に観察できるようになった
- 腕が円盤と一体化してきた
- 腕の外側の淡いガスが描出されて円盤が一回り大きく見える
- 本体から少し離れたところ漂っている淡い雲がはっきりしてきた
140分バージョン*4の予想外の描写に驚いた。総露光時間を増やすことで、イメージがどんどん精細さを増してくる手応えを感じている。あらためてHubbleのイメージで答え合わせしようにも、あまりにも写りが違っていて、ニヤニヤはまだまだ先のことになりそうである。
総露光時間を伸ばして、どこまで見えるようになるのか?これからのシーズンが楽しみである。
南東の空のおとめ座のソンブレロ銀河
- 導入ルート からす座δ星からの暗い星の並びをたどって(いまの季節の地上座標系なら左斜め上に)いく
- 撮像 46コマ(F4開放、露光時間23分)

星の集まったのっぺりした構造の楕円銀河なので、すばる望遠鏡をライバルに(←身の程知らず)仕上げた。
無意識に銀白色の星が集まって光っていると考えてきたのは、何かの刷り込みであるのか、ストレッチして黄色~オレンジ色に見えると、少し違和感を覚える。
生まれてはじめてなのでしようがないが、銀のお椀をアルマイト鍋のように画像処理してしまったかと…(以下略)。
*1:総露光時間87分バージョンは、バックグラウンドのカブりを抑えるために、周辺部のディテールを殺して全体に暗く淡い画になっている。今月のはじめにMASの腕試しで解析したときにはこれ以上強くストレッチをかけると画が破綻するという限界の条件で腕を描出したベストエフォートとお考えいただきたい。総露光時間120分バージョンの方が画全体が明るいが、総露光時間を延長したから光の量が増えて明るくなったということではなく、「バックグラウンドのノイズが減ってS/N比があがったことで、強いストレッチをかけて明るくしても破綻しない画像になった」とご判断いただきたい。ストレッチのかけ方の違いを棚に上げて、説教臭くなって申し訳ない。
*2:天の川銀河のガスやダストなどが銀河の光を反射して淡く光る「星雲」; Integrated Flux Nebula
*3:30秒間の撮像の合間に、対象天体の日周運動を追尾するために三脚の雲台を微調整するのが、タイパを下げる大きな要因になっていることから、対象天体を滑らかに追尾できる雲台として現有のTS式屈折赤道儀H型の利用を検討している
*4:第一印象は、はっきり見えてきていた腕が消えてしまった…どうしよう?これではブログに出せないゾ…であった