卵を抱くペンギン銀河(Arp 142, NGC 2936/2937)をPENTAX KP+300mmで撮る(PixInsight処理メモ)|スターフィールド撮影2026(37)第35夜

 卵を抱くペンギン銀河(Arp 142, NGC 2936/2937)をPENTAX KP+300 mmで4分露光。PixInsight処理(WBPP〜MAS)で得た画質と、雲間で撮影した8フレームの実際の結果を解説。

2026.02.23 ライトフレームを70枚、99枚、撮り足したバージョン 公開
     ライトフレームを増やすとどう変わる?|70枚 vs 99枚バージョンを比較 加筆

 観測地に入ったら、どんどん雲がわいてきて、撮り増しを予定していた対象が次々と雲に塗りつぶされていく。雲間を見上げていると、ふとばえるペンギンに手招きされているような気がした。ハッブルやジェームズ・ウェッブでないと写らない?はたしてPENTAX KPと300mmレンズで写るのか?と試しているうちに快曇になって撤退。雲がかからずに撮れたのは8フレームだった。

対象天体
  1. 雲間に見えるうみへび座α星から星づたいに北へ

  卵を抱くペンギン銀河(Arp 142, NGC 2936/2937)→Worldwide Telescopeで見る
   ペンギンが卵を気遣いながら温めているようなユーモラスな姿を、ハッブル宇宙望遠鏡のサイトなどでご覧になった方も多いのではないだろうか。
   実際には親ペンギンのように見える渦巻き銀河は、卵に見える古い楕円銀河に衝突し、引き込まれ、渦巻銀河の円盤構造がペンギンの首のように歪んでしまっていると考えられている。
   Harold Arp博士がまとめた相互作用する銀河リストの142番目に登場するである。
   
   探した限りでは、PENTAX KPで撮像された画像はネット上で発見できなかった。暗く小さいために撮像対象になりにくいのだろうか?

卵を抱くペンギンを10コマ撮像して、収穫は8コマ・総露光4分

 まずはカメラを肉眼でも見えるうみへび座α星に向ける。
 ライブビュー画面に写る星の並びをCartes du Ciel (CdC)の星図と照らし合わせながら、目的の場所に到達。
 ちょうど真南に三角点の地図記号にそっくりの星の並び*1がある。
 この「三角標」をガイドに撮像。
 雲が通過して視野の星が見えなくなるのをやり過ごしながら撮像するうちに、ついに快曇になり、10フレームで撤収。うち2フレームは雲が写り込んでいたため解析から除外。

使用機材
  1. PENTAX KP + O-GPS-2 アストロトレーサー使用 30 s露光
  2. サードパーティ製USB-C電源ケーブルでモバイルバッテリーからPENTAX KPへ給電
  3. PENTAX FA645 300 mm F4 {IF} ED

     + PENTAX 645-Kマウントアダプター
     + レンズヒーター 絞り開放(F4)

  1. Velbon Carmagne 530EL三脚

      + GITZO R.4+雲台

今回の導入ではCdCのCentre on機能の便利さが際立った

      無料ながら非常に高機能な星図ソフトウェアCdCの魅力とカスタマイズ

     屋外持ち出し用の小型端末

  • CdCのスクリーンで対象の天体(Arp142)近傍を長押しタッチして、
  • 四角い領域が表示されるのを確認して指を離す
  • (マウスを右クリックしたときの)メニューが出るので、「Centre on」をタップすると先ほどの四角い領域の部分がスクリーン中央に移動して表示される
  • 画面右端の縮尺ボタンで表示サイズを調整
  • 最寄りの明るい星から、ライブビューとCdCの表示で途中の星の並びを照らし合わせながら対象天体(付近)まで移動
撮像条件

  対象天体は、その場ではライブビューによるファインダー画像でも、撮像画像でも確認できない。
  そのためガイド星の位置を頼りにフレーミング。

  • 撮像枚数:8コマ(F4開放、露光時間30 s)
  • 総露光時間:4分←これはいかにもキビしい…
PixInsight 1.9.3による画像処理フロー
  1. WBPP 1x drizzle integration
  2. blurXTerminator
  3. noiseXTerminator
  4. Dynamic Background Extraction
  5. image solver
  6. Spectrophotometric Color Compensation
  7. SCNR
  8. Multiscale Adaptive Stretch
  9. Annotate Image
Arp 142 銀河 PENTAX KP 300mm PixInsight処理

 撮像ファイルのインテグレート後autocrop(自動的に端を切り揃えてくれる)のフルサイズ画面を概ね1/4に縮小。アノテートされた対象天体とその拡大像を重ねて表示。

 WBPPでダークファイルのみでインテグレートしてみたら、背景が嵐の海のようになった。薄雲のカブリの影響と思われる。
 背景の荒れはDBEでも処理しきれず、大いに弱った。
 当日撮像していたフラットファイルを加えてWBPPをやり直して少し緩和させて、なんとかSPCCで虹色の雲が写り込んだ程度の背景に落ち着いた。
 
 ご覧のように、300 mm望遠レンズをつけたAPS-C一眼カメラの撮像画面の中で、Arp142は"pale brown dot"よりは大きくても、はなはだ小さい。ホトトギスがカッコウの卵を温めているようにしか写っていないが、本人は「ペンギンのとさか」をつかんだつもりになっている。
 今後総露光時間を増やしてみて、さらに愛嬌が感じられるくらい解像感が増すものかどうかご報告したい。

ライトフレームを増やすとどう変わる?

70枚 vs 99枚 比較(2026-02-23)

 2月20日に撮像した70枚のライトフレーム(総露光量35分)、さらに22日に撮像した29枚を合わせて99枚(総露光量45.5分)のライトフレームをもとに画像処理を行った(それぞれ70枚バージョン、99枚バージョンと呼ぶ)。下の画像の左側が70枚バージョン、右側が99枚バージョン*2である。
 
 画像全体のS/N比が段階を追って向上してきていることがうかがわれた。特に顕著であったのは以下の点であった:

背景のノイズ(粒状性)・滑らかさ

 Arp 142は画像全体から探し出すのが難しいくらい目立たない銀河であると書いたが、ライトフレームの増加によって、全体表示した画像の中でも視認できるようになった。
 また、外縁部の淡い構造もわずかではあるが確実に、分離して描写されるようになり、輪郭の描写が改善した。
 画像処理において、DBE→SPCC→MASとプロセスが進むたびに背景の粒状性の荒れが気になって、noiseXTerminatorを多用している(後述)。
 この傾向は、70枚 vs 99枚 のバージョンで比較しても、劇的な違いがない。
 そこで、「日をまたいで背景を荒れさせる処理系の要因」を探し、画質改善の試み*3を続けている。

銀河の輪郭の描写

 輪郭の描写に関しては、変形した銀河の場所を、ペンギンの体にたとえて説明する:

 70枚バージョンでは(当初のホトトギスと比較して)ペンギンのとがったくちばしが描出されはじめたように見えて喜んだ。
 ところが、本来はない尻尾の部分にタキシードを引きずったような明るい領域が見られた(MASのストレッチで隠している)。
 ライトフレームを29枚追加した99枚バージョンでは、この部分は背景と同じレベルとなり、S/N比向上がうかがわれた。
 また全体にシグナルが強くなったことで、くちばしの先に出現した輝点が強調されてコブハクチョウのような印象になっている。
 これらのnoiseXTerminatorの多用による、輪郭のボケで甘くなった可能性もある。

ライトフレームの枚数を重ね、処理フローを見直すと

 ライトフレームをもう少し積んだら、ペンギン銀河輪郭の描写はどこまで滑らかになるのだろうか。

*1:正三角形の重心に位置する少し暗い星は、ライブビューには映らず。ライブビューで表示される星の限界等級の一例として憶えておく。銀鉄に出てくる「三角標」とはこういう星の並びをさしていたのだろうかと考えてしまった。

*2:バージョン間で画像の方角が異なり、上が北というルールも守られていない無作法をお許しいただきたい。

*3:フラットフレーム画像の見直しなど

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