天は二物を与えずというが

 一昨日夕方plutoに召喚されて、びくびくしながら出頭。MITメディアラボ(メディアラボって何?という読者に、参考文献としてビーイング・デジタル―ビットの時代をあげておく。絶版ながら15円で買えたりする今こそ自炊の時である)で20年前に開かれていたかもしれないような非公式の、新入社員に支給するMagicSlateのOS検討会に招聘されたのであった。
 候補が大きく2つあるのは明白なのであるが、必要最低限の仕様も明確でないまま、談論風発な話題が展開したのであった。筆者は本店営業部でどこまで使えるかについてのご意見番を期待されているようでもある。実際には、アプリだけではなくて、提供するコンテンツの質であったり、さらにそれらを製作する際の教育ポリシーなどについても意見を開陳したいが、合いの手が長すぎてどうにも話がさえぎられてしまうきらいあり。ともかくOS選定については、アプリストアでの品揃えの観点から単純かつ客観的な比較対照表を作成したら、話は5分程度ですみそうに思った。
 というようなことを思いながら、AppleのアプリストアでWolfram alpha(250円)を発見した。「理系の人なら一日中楽しめる」というような評を読むと、ついダウンロードしてみたくなるのであるが、またまたそこで優柔不断に躊躇してしまう。Wolfram博士といえば、われわれの世代ならMathematicaの開発者として有名である。かつて筆者もMathematicaを使いたいばかりに、Mac IIのメモリを2 MBに増設するだけに夏のボーナスを全額つぎ込んだ思い出がある。現在なら既存のハードウェアで動くのであろうが、日常の計算に、と薦められるhome editionであっても、現在の家計ではなかなか…なのである。
 さて、1990年代、Macintosh用のMODプレーヤーPlayer PROをよく鳴らしていた。MODはもともとはAmiga用の音楽フォーマットであった。ファイルサイズが小さく、mp3ほど圧縮解凍に手がかからないので非力なCPUでも使えて、しかも音源がサンプリングした楽器の音なので、原曲の雰囲気がよく再現されており、大変できのよいテクノ系の曲の膨大なレパートリーがあった。作者は、スイスのジュネーブ在住のRosset Antoine氏で、シェアウェア代金を送金して送ってもらったPowerMac版4.4.2同梱のCDは、今でも手許にある。その後、気がついたらオープンソースプロジェクト化した5.9.8が開発されていた。最新版は5.10 developper oreview 2のようである。再生ファイル形式の一覧にMODのないPlayerPRO for Androidとの関連は不明である。
 Antoine氏は2003年11月から医用3D画像ビュアーOsiriX(おざいりくすと発音するようである)の開発を開始し、現在も中心人物である。Mac OS X専用で、Windowsへの移植がまったく期待できない使えるソフトベスト3に、iPapers, Amplify 3.1.4と並んでランクインするソフトである。その歴史とご近影はこちらで拝見できる。"a student project"から始まったと書いてあるのを根拠に、2003年に25才であったとして現在33才くらいであろうか。
 Mac OS X用のソフトは32 bit版はフリーであり、拡張機能として提供される64 bit版は29,000円、iPad用のOsiriX HD は2,600円でアプリストアに並んでいる。
 この二人の天才の作った卓越したソフトウェアには、いずれも本来頭の中にイメージを作ることが難しいものを、簡単に画面に表示し(たり音声出力し)てしまうような魔法を実現してしまったというところにその特徴があるように思われる。[ソフトウェア]

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