くるしまマーチス

亡父は筆者製作の2A3シングルステレオパワーアンプやスピーカーなども早々と荷造りしてしまっていた。最後を予感していたとは到底思えないのに、なぜしまい込んだのか。一日も早く福岡に移住したかった、とも考えられ、そうなると見て見ぬ振りを決めこんできた息子の立場はない。
故障して鳴らなくなった、と言ってしまい込んでいた遺品のVictor社の木目調ラジオを出して、試しにスイッチを入れたら、ふつうに鳴っていると母刀自が言うのであるのである。ラジオに耳を傾けるのが趣味であった父には、耳が遠くなって聴こえなくなってしまったことは、本当はかなり辛かったのではあるまいか、ということに思い至る。
 木目調ラジオには、AM、FM、さらにアナログ時代のテレビ音声と3つの受信帯があった。地デジに切り替わってしまった現在では中古品としてもほとんど商品価値が無い。中波の受信周波数の上限は1620 kHzで、ごく通常の仕様である。そういうことから考えると、くるしまマーチスを受信できる機械は父の手許にはなかったのに違いない。
実家の2階の寝床で愛好者参號をつけて1651 kHzにあわせてみたら、ちゃんと受信できるのにびっくりする。それも、もったいないことに大阪マーチスまで混信している。朝になってみると、混信はなくなって明瞭に聴取できた。愛好者参號を予想よりもかなり北向きにしないと感度が上がらないので調べてみたら、送信アンテナは、来島海峡海上交通センターにあるのかと思いきや、公式記録ではこの程度の記載にとどまって、うっかりしていると送信所と理解できないけれど、塔ノ峰にあるらしい。
1665 kHzの大浜の潮流情報の方も聞き取れるかどうかという状態ながら受信可能であった。送信アンテナは、大浜の潮流信号所ではなく、来島大角鼻にあることが判明。なお、くるしまマーチスの大浜(愛媛県今治市)を大浜崎燈台(広島県)と混同している文献もあるようなので、注意されたし。
関門海峡の火の山下潮流信号所の放送の送信所も実は北九州市門司区風師山にあるということだ。
潮流情報を電光表示で見られない位置の船舶に電波で情報を届けようということなので、もともとサイドローブを狙っているというべきであろうか。電光掲示板のところにアンテナがあるはずはないのである。

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