昨年は、手帳の使い方というよりも残された時間の使い方について、新井直之氏の著作や木下是雄先生のエッセイをもとに考えを進めることができた。概ね3か月に一度自分のために「編纂」した手帳を改訂して(使い捨てて)いく。こういう使い方にセリアの10月始まりのAGENDA 2020が、月別フォーマットの土日のスペースがウィークデイよりも広く、最適のレイアウトであることが判明した。手帳の薄い紙だと万年筆では裏写りするので、これはもっぱらセリエで110円で買える細書水性ボールペン(三菱Uni Signo 0.28 mm)で書くようになり、ほとんど万年筆の出番がなくなってしまった。
さらに、スケジュール管理とは別に、フィールドノートを短期記憶の格納場所として持っておくことの重要性についても、よる年波のせいであろうが痛感した年となった。
たまたまAGENDA 2020と類似のフォーマットの地団研フィールドノートを使う幸運に恵まれたので、地質フィールドノートのヒントを参考に、(もともとのおすすめは二色ボールペンであったが)4色ボールペンやぺんてるマルチ8(8色色鉛筆)も贅沢にならない範囲で揃えてみた。
ぺんてるマルチ8が意外とよくて、社員食堂でノートを読み返し、そういえばこの論文の模式図はダウンロードしておくべきであったとか、このキーフレーズをもとに説明のストーリーを組み換えてみようとか考えたら、そこを青とか緑の色鉛筆で塗ってしまう。今なら強調するところには蛍光ペンというのが常識かもしれないが、色鉛筆で背景を塗りつぶす手間と時間が記憶の刷り込みと同期しているように思う。それで、万年筆の出番はさらに少なくなって、Mont Blancノブレスも洗ったきりしばらくインクも入れていない。
4色ボールペンは百円で買えるようなものを買ってみた。緑や青の字も悪くはないが、厳密な色分けルール準拠に注意を払いすぎるようなやり方は性分に合ってないし、そうでなければ気まぐれに色を違えて意味もなくにぎやかなメモをとるだけで、よく使う色の芯が先になくなってどこかでなくしてしまうだけだろうと思いこんでいた。しかしグループワークで発言者ごとに色を違えると、発言の都度名前を書かなくてよい分、記録の効率が上がった(が、ディスカッサントの数が5人になっただけで破綻するのは目に見えているのだが)。
という昨今、ふとヤフオクにMont Blancの4色ボールペンが出ているのを見かけてすっかりやられてしまった。いまどき100円しない4色ペンもあって、書き味だって(替芯に依存するので)同じなのに、お値段が400倍もする4色ペンを買う意味はどこにあるのだろうか。と買いたい気持ちを分析してみると、すでに経済学では解明のしようのない、美学の領域に存在している。
というか、iPad Pro 12.9 inchのLiquid Retina Displayで一体何色表示できるのか(これはワンクリックでは解決せず)よくわからないが、そのDisplay P3完全対応のApple Pencil(またはそのパッチモノ)を準備するほうが先かもしれないと思い直した。