暗渠の道

 自転車で走っていて道に迷い込んで、ものすごく得をした気になることがある。対向車をやり過ごすのに神経をすり減らす必要がない道、いつもよりも近道のワープ道、いきなりうっそうとした林の中を通り抜ける道、と様々であるが、街の中で異次元空間に出会うというような、意外性と爽快感のある道が、出身高校近くにも、大阪北部にも、そして岡山市にもあった。多分そこを通りかかれば間違いなく辻を曲がってたどり着ける確信はあるが、Google mapを広げたからといってもそうそうこの道、と指すことができるものではない。空間的な記憶が地図に写像できないのは、すでに忘却の地平線の向こうにあるからであろうか。その地を自転車で再び走ることができない限り、桃源郷への道は永遠に失われてしまうのであろうか?などと考えながら、表通りに面した家の敷地の裏手をカーブして川岸にいたる暗渠の上を走る道に入り込んで、そうそうここにもあったなと気がついた。

本ブログではamazon associate広告を利用しています。