AIのジレンマ(3)パラダイムを超えることは難しい

 本日最終日のオンラインイベントで、リモート講演を拝聴。

 ご講演は吉川先生の《ゲノム科学への道》を彷彿とさせる大変立派な内容であった。ただし、2022年6月(収録時点)でのmolbio道の到達点として紹介されたのは、機械学習によってタンパク質の立体構造を予測するRoseTTAFoldとAlphaFold2(DeepMind)であった。
 《ゲノム科学への道》のあとがきで学問のパラダイムを「時代を代表する概念とそれに即した実験デザイン」と定義する吉川先生は、パラダイムシフトの難しさを実感として語っておられる。また、「科学は連続しており飛躍はない」ともおっしゃっておられて、そのことを踏まえるとiPS細胞に続いてAlphaFold2で結びとするのは少し飛躍しているのではないかとも思われた。
 タンパク質分子は、遺伝子にコードされた通りのアミノ酸配列で、自ら最小エネルギーの形態を探して落ち着くのであるから、簡単に構造予測できそうな印象を持ってしまうのであるが、深層学習で高精度に予測するというアプローチで手がかりを得ることがブレイクスルーになるほど、実験的に決めるのは難問であるということなのであろう。
 後日記(2022-07-28)>朝日新聞に出た記事を追記する。
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