刑事コロンボ★視聴者投票ベスト20を毎週放送(NHK BSプレミアム)(5) 第4位 溶ける糸 隠れた主役はシクロスポリンか?

 4Kになると手術室の二階の見学席からのシーンが高精細で見えるようになるだろうか。
 それにしても、今のように監視カメラが遍在する世の中であるとこの犯人のような行動はいかにも無防備に見えてしまう。
 犯人は心臓外科医で、心臓移植後の拒絶反応を抑制する薬剤の開発を研究していて、ほぼ解決できたと確信していて、あと一年はデータを取らないと発表してはダメというボスを亡き者にしようと、弁置換術のオペを執刀した時に溶ける縫合糸を仕込んだ悪役として描かれている。
 ヒトからヒトへの心臓移植は、1967年に南アフリカケープタウン大学のクリスチャン・バーナード執刀で最初に行われたが、移植を受けた患者は18日後に死亡し、拒絶反応が原因であったと当時報道されていたと記憶する(当時筆者は小学校2年か3年であった)。
 《溶ける糸》が制作されたのは1973年であるが、シクロスポリンは1969年に土壌真菌から発見され、1972年に免疫抑制作用が発見され、腎または肝移植後の拒絶反応抑制作用が確認されたとのことである。脚本はこのニュースをモチーフとして、ストーリーを着想したのではないだろうか。
 まさにこの脚本に描かれているのは、拒絶反応を制御して移植後の生存率を高められる画期的な免疫抑制剤が待望される時代精神である。とは言え、シクロスポリンが米国で承認されたのは1983年、先生が捕まって10年後である。そしてその後切れ味の良い免疫抑制薬として移植治療の成功率を飛躍的に高めたとされる。

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