史上最高のライブ

 筆者のPink Floyd体験は、中学校の音楽教室で聴いた《原子心母》にはじまる。49年前のことである。当時プログレッシブ・ロックのレコードを音楽の授業でかけてくれた先進性には敬意を表するしかない(が、オーケストラと共演しているのは確かなので、サウンドエフェクトで大砲をぶっ放しても、クラシック音楽の範疇であったのかもしれない)。発表直後の《狂気》のLPレコードを買って、松山市のいよてつそごうのカットアウト盤バーゲンで買った《おせっかい》輸入盤の《One of these days》のアレンジが国内盤と違うのでがっかりした思い出がある。
 『NHK 4K洋楽倶楽部ロジャー・ウォーターズUS+THEMライブ』の録画を再生。
 史上最高との評価も高いアムステルダムライブ(2018年)の冒頭、ケビン・コスナーのようなおじさんが出てきてベースギターを弾き始める。筆者のロジャー・ウォーターズ像は、あの頃のブックレットに掲載されていた意志の強そうな、しかし夢見がちそうな青年の面影でとまっているのである。
 オープニングから、Speak to me、Breathe、One of these days、Time、Breathe (reprise)まで、かつての原アレンジがLPレコードにカッティングされた溝の隅々まで忠実に再現されていて、思わず中学生の頃にタイムトリップしてしまいそうになる。聴覚と視覚のねじれを痛切に感じてしまう。
 ただし、The great gig in the skyまで来て、ジャジーでないバックコーラスを物足りなく感じてしょうがない。50年経って復元できないこともあるということだろう。

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