15年と15分かかった魚釣りの話

 筆者は旧Nifty-Serveのバイオフォーラム(FBIO)に大変お世話になった。
 ちょうど秋葉原Macintosh Portbleの出物を見つけて買って帰り、一時期出向先の勤務先まで持参(というにはデカく重すぎたが)して未読記事を読んでいた。当時はモデムを介したダイアルアップ接続であったので、電話代節約のためにフォーラムを巡回して未読の投稿記事だけを素早くダウンロードするソフトがあって、未読記事はオフラインで読むのが普通であった。そんなのスマホでできるのでは?とツッコみたいわけぇもんには、当時はまだインターネットは大学に引かれた専用線で使えるかどうか(しかも最初のwebサーバーが動いたのが1990年のクリスマスイブである)、ケータイといえばマルサの女に出てくるようなショルダーベルト付き通信機という時代だったとお答えしておく。
 (たしか)シスオペの渡辺さんが投稿された3年(たしか3年であったと思う)15年と15分かかった魚釣りの話」は、当時の(たしか)「現代化学」誌に掲載されたDolittle先生の回顧談を紹介されたもので、今でも忘れられない。ドリトル先生(Jan 10, 1931–Oct 11, 2019)は、塩基配列データベースを利用した相同性解析の威力を示しバイオインフォマティクスの先駆けとなった論文の著者で、その記事はその論文に至る物語なのだった。
https://doi.org/10.1126/science.6304883
 そのファミリーヒストリーを読んだ感激は間違いなく筆者の人生を変えたのであるが、その書き込みもFBIOの資産まるごとネットから撤去されてしまい、今ではすっかり行方不明になってしまった。おそらくは大元に論文の体裁ではない寄稿文のようなものがあるだろうという想定でpubmedをサーチするが、どうもこれではない。
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
 13年以上手詰まりで経過してきたが、たまたまここにきて国会図書館の蔵書検索で現代化学誌1990年4月号に「科学研究のとりこになる」というタイトルでDoolittle先生の名前が見えることを発見した。時期としても一致するので、これが突破口になるのではないかと期待している。
ndlonline.ndl.go.jp
  後日記(2021.03.24)>Doolittle教授は、平成元年8月、日本学術会議の招聘により来日、桐蔭学園横浜大学で"Addiction to Science"という講演をされたのだという。その講義録を実にこなれた日本語にしてくださったのが、清水朗氏と稲田祐二教授(Aug 22, 1927 - Mar 2, 2012)である:「我々は大きな魚を捕まえた。そしてこの実験には15年と15分かかった。」15分、それはコンピュータが検索するのに要した時間でした。というシビれる訳文に30年ぶりに接す。

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