発言内容の実態にそぐわない標題

 とある新聞でのインタビュー「ウイルスの実態と合わない対策 過剰な恐怖広げた専門家」を興味深く拝読。
 西村先生の、今後のCOVID-19が心配で心配でたまらないという気持ちがひしひしと伝わってくる。ただし、筆者が紙面の編集責任者なら標題の後半部分には、「より空気感染重視の対策を」か「メリハリの利いた感染対策を」か「緩和の進め方に注視が必要」とかに訂正しただろう。
 西村先生のお話の中には、「ウイルス学者から見て笑っちゃう」ような対策がとられてしまっている現状や、国民をそのようにミスリードしてしまった専門家会議への批判と読める部分も確かにある。
 その上で、西村先生が今第二波に呑み込まれつつあるように見えるこの国の人に本当に届けたかったメッセージは「密室など条件は限られるものの、ウイルスは、呼吸で体内に達する方が物を介するより、はるかに少ない数で感染する特性を持ちます」ということではないかと思っている。もちろん、西村先生はみんなちゃんとマスクしてウイルス排出量を最小にとどめる努力をしているという前提でお話をされたと推測する。しかし、素人から見ても笑っちゃうような、全く行動変容につながっていない集団と、毎朝すれ違う筆者の見方は少し違う。
 世の中には、言いつけを守ってマスクして登校する子どももいるし、専門家会議のメッセージから感じ取って「新しい生活習慣」を身につけられた方も多いと思うし、中には過剰な恐怖を覚えて人との交流ができなくなってしまわれた方もいらっしゃるに違いない。だが、おかげで第一波をなんとか乗り越えることができたのではないだろうか。
 その一方で、この期に及んでも何の根拠もなく自分は大丈夫と思っており、つけろと言われたら意地でもはずすような、脳天気で幼稚な人々がいるのである。ウイルスに操られて運び屋にさせられるのはやめましょうというメッセージをどうやって届ければよいのであろうか。
 隣国のプレジデントの例を引き合いに出して、「専門知」を持つべきと諭していては、逆に反発を生むだろうか。行動経済学的に考えてみたい。
 なお、専門家会議のみなさんのご功績は、今後の検証を待つべきだと思うが、未知のウイルス感染症に立ち向かって国難を救われたと個人的には考えている。ただし、経済自粛で甚大な被害を被った方々には申し訳ないと思うし、「過剰な恐怖を煽られ」たことを快く思われないご心情はお察し申し上げる。

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