筆者駆け出しの頃、プレートリーダーという測定器の測定値が感熱紙にタイプされたのを手打ちするのが嫌で、測定器本体の後ろにデータ出力用の端子があるのにヒントを得て、パソコン通信入門というような本で勉強した。当時はRS-232Cという通信規格で、そのスピードたるや300 bps (75 bpsだったかも)であった。岡山市表町商店街のパーツ屋さんでRS-232Cコネクタ2個とメーター売りでケーブルを買ってきてデータ通信用のケーブルを作った。卒業の年にはOPアンプICを使ったオーディオアンプを作っていたので、ハンダゴテ一式はお菓子の空き缶に入れて持っていた。片付けていた書斎の棚からクロス接続でハンダ付けするためのセットリストが出てきて懐かしく思った。
天神のカホパーツセンターやアキバの若松無線とよく似た部品屋さんのあった場所は、今はシャッターの閉まった空き店舗になってしまっている。
そのクロスケーブルをテストするために、FM-11AD+とFM-8とをつないで、キーボードからタイプした文字が、つながった先の画面に表示されたときの感激は忘れられない。今でこそコンピュータを起動した途端に無線LANに接続されるのが当たり前だが、当時のパソコンは、2台持っているだけで尊敬された(か呆れられた)時代で、データの共有はフロッピーディスクを介するくらいしか方法がなかった。おまけにディスクもディスクドライブも高額であった。理解のない中間管理職の先輩からはハラスメントを受け続けた。前例、予算、その場の空気に左右されるのはまさに個人が溶解している証拠であったことを今にしてしみじみ思い出す。
ストリームとして流れてくる測定値のキャラクタを、一文字ずつ記録するというプログラムから始めて、log-logit変換して標準曲線を描いたり、測定値をユニット値に変換したりした。ハイブリッドなワクワク感を共有して、どんどんやらせてくれたのが恩師のすごいところだ。