クワス

 昨年の11月頃であったか、Movie+チャンネルで宇宙開発史の映画特集があった。
 取り上げられた映画は《サリュート7》、《スペースウォーカー》、《ドリーム》、《ライトスタッフ》、《Apollo 13》と、米ロ取り混ぜた構成であった。
 録画したのを観る時間がなかなか持てずに、週末の仕事が減った今の時期に1年越しで早送りで飛ばしながら消化した。
 旧ソビエトが有人飛行においてアメリカ合衆国に先行していた時代の《サリュート7》、《スペースウォーカー》は、安全なはずの地上に無事帰還してからのどんでん返しが、アメリカ映画にはない見どころであった。
 当時報道されることのなかった過酷なミッションについては知らないまま、「ソビエト宇宙飛行士のビール」と聞いて小学生の頃から憧れていたのがクワスであった。ライ麦酵母で発酵させた微炭酸飲料で、いまどき自動販売機で買えるようなものではなく、タネとなる酵母の維持の問題もあるのだろうか、ラッシャンレストランで供しているところも見つからない。そういうなかで製造キットを見つけた。

後日記(2020.04.30)>日本語訳のレシピのシールが貼ってあるのを読んで、頭の中で培養実験のプロトコールを組み立てていたのを大型連休の初日に試してみた。買っておいた「いろはす2 l PETボトル」2本から250 ml程度の水をとって、鍋で沸騰させる。そこにキットのライ麦麦芽を入れて薄いライ麦スープを作る。一応煮沸消毒のつもりで煮立たせて、雑菌の入らないようにラップをかけて冷まし、人肌くらいの温度になったところで酵母の袋を開封して投入。2時間そのまま室温に放置してからいろはすのPETボトルに1.5 lほど水を残したのに、この培養液を移し、栓を緩めて1日室温で発酵させた。最初は「イーストエキストラクト」臭がしていたのが、だんだん薄まってくる。時々蓋をきっちり締めて転倒混和すると少し発泡するようになってきた。アルコールの香りはほとんどないものの、筆者が酔っ払うのに十分なくらいに醗酵してきている。Wikipediaには「微発泡性微アルコール性の飲み物」と書かれているが、これが本当にコスモノーツの飲み物だったのだろうか。まあウォッカと比べれば、清涼飲料水のようなものであろうが…。醗酵がオーバーシュートしないうちに濾過して冷所保存しなければならないのだが、50年ぶりのクワスが、大型連休の間に消費しきれないほどできて持て余している。

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