Photonuclear reactions triggered by lightning discharge

 昨日の朝日新聞に紹介された『雷から「反物質」身近な場所で発見、研究者も驚き』によると、雷の放電のパワーで反物質が生成されるというふうに読み取られてしまうのであるが、本日Nature誌のahead of printで確認したところ、原論文のタイトルは「雷放電で引き起こされる光核反応」ということである。
 雷放電で発生した高エネルギー光子によって生成されたアイソトープ13Nや15Oがβ+崩壊する際の陽電子を「反物質」と呼ぶと、上述の新聞記事になってしまうが、陽電子はすぐに対消滅してしまうので地上からはγ線が見えるということだ。記事ではちゃんと正確なメカニズムが解説されているにも関わらず、挿絵にはどんどん広がっていく反物質の雲が描かれていて、誤解が広がりやすいのではないか。トンデモ科学のように読めてしまうのは残念である。
 ちなみに、このβ+崩壊で出てくる陽電子対消滅する際に生じるγ線を利用して体内のmmサイズの腫瘍組織を検出しようというのがPET (positron emission tomography) scanということなので、本研究で用いられたγ線検出器アレイはある意味大気のPETスキャナーと考えられなくもない。
 

本ブログではamazon associate広告を利用しています。