Kindleは売れるか

 amazon.com電子ペーパー採用の電子ブックビュアーを発表したという。東南アジアの洪水防止のためにも(というのはもののたとえであるが)歓迎すべきことであろう。これはレコードからCDへ、にはじまってVHSカセットからDVDへ、銀塩写真からデジタル画像へ、とか目下進行中の地上波アナログ放送から地デジへとかのスローガンに相当するような、容れものの進化にともなう在来アナログ種の絶滅につながるのであろうか。
 電子ブックビュアーは過去にも出ているが、あまりブレイクしたようには思えない。その理由は、縦画面は本と同じレイアウトでよいかもしれないけれど、一台何か持っていくのならノートPCの方がいろいろと使えて便利だもんねということや、読み込んでいくうちに手になじみ、愛着がわいてくるというような本と読者とのinteractionが電子ブックビュアーにはない、というようなことに集約されるのではと思う。
 スキャンして仮想本棚を構築する基本原理というのは、当然、書いてある内容そのものに魂が宿っているのであって、紙やインクやそれらの綴じられ方は関係ないという考え方であるけれど、どうも筆者などは、両方の考え方が共存しているようである。しかも、小説なら前者、学術論文なら後者というような、内容による線引きができるわけでもなさそうなのである。
 たとえば、積み上げて15 cmほどにもなるゲノム解析の論文のプリントアウトをクロス丁で製本して、金文字で背にタイトルを入れてみたいという誘惑と、それらのもとになったPDFを仮想本棚で仮想ゴム紐でからげて管理したいという欲望は、少なくとも筆者の中では両立していて、拮抗するものではない。ある意味アナログ本には、工芸品を所有する欲望が働くということもありそうであって、必ずしも画像や音曲と同じように考えていないところが面白い。[本]

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