今日は,休日営業の帰りに丸善→紀ノ国屋と渡り歩きました。
  ますむら・ひろし:アンダルシア姫2,朝日ソノラマますむら・ひろし作品集第二十巻,1200円+TAXを買いました。これは作品集第2期の最終巻ということになります。
  ますむらさんといえば,アタゴオルの世界のヒデヨシ猫が有名です。宮澤賢治イーハトーブの隣村アタゴオルアタゴオル物語,アタゴオル玉手箱,ジャングル・ブギ)やその隣のラビットタウン(夢降るラビットタウン),はたまた南国のロバス島(コスモス楽園記)や南極に近いカリン島(オーロラ放送局)では猫やペンギンが人間とともに日本語を話し,必ず憎めない不良猫(か,科学者かペンギン)が登場して痛快な活躍をしてくれました。そして,そこには必ずといっていいほど,エスパー的能力を持った少年か少女が登場しました。エントロピーは増大せず(つまり誰も死なず,歳もとらず),セックスも暴力もなく,不良も鼻つまみモノも超能力者も共存する社会,とーほぐ弁のビートルズがBGMで流れている世界,老人と少年しかいないいつまでも続く円環構造の物語というのがますむら作品集の90%を占めるわけです。ところが,19/20巻に収録されたアンダルシア姫は違った。
  宮澤童話の世界から遠くはなれたスペインの南国の太陽に焼かれるヒマワリ畑に舞台を移し,大人の恨みとか怨念とかを描いた作品です。特に20巻の後半は,ヨーロッパ本位な歴史観に対する痛烈な批判であるのです。そして大臣が無反省な発言を繰り返して更迭されるどこかの国本位なそれ(や,小林ヨシリン:戦争論)に対する批判でもあるでしょう。賢治的な世界から完全に離脱したというわけでもないですが,これまでの作風から一歩踏み出し,ますむらさんの核心がジェットのように噴き出した作品です。大学5年の時以来ますむらさんのファンで,その時々に人生の方向さえ変わるようなインパクトを受けてきたのですが,やはりすごい人です。

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