はやぶさ2カプセルの帰還

 NHKの特別番組を観る。
 予想時刻に、予想の空域に向けたハイビジョンカメラの画面右端から光り始めた火球がまっすぐ中央を横切って、左端で消える。
 これは計画通りにうまくいったということであろう。ビーコン信号も受信されたということで、明日には無事回収の報が届くに違いあるまい。
 その後「はやぶさ2は順調」は本当か 40億年前の砂とリスク(2020年12月5日 22時05分にデジタル版に掲載、小川詩織氏署名)を読む。
 タイトルは著者が何かを疑っていることをほのめかしているが、本文を拝読しても記者会見での説明が不誠実だと主張されたいのか、今後も予想外のことが起こるので「順調」と主張するのは楽天的すぎると訴えたいのかはっきりしない。
 細かいことであるが、本文の「初代はやぶさが豪州の空で砕け散る」という表現は『妥当』だろうか。いかにも強度不足で空中分解したような印象を持って書かれているようにお見受けして残念に感じた。
 今週のはやぶさ君の「現在の(初代)はやぶさ君は、地球の大気に溶け込んでいます。」というステートメントには、使い残しの超貴重なキセノンガスを地球の大気に戻すために最初から探査機を地球の大気圏で燃やす計画だったという意味が含まれている。また、初号機(2010年6月13日)の帰還が月齢0.6の暗い夜(2号機は下弦の月夜)に調整されたのは決して偶然ではなく、カプセルの飛行経路を見つけやすくする光跡マーカーとして、カプセルの落下地点を確実に把握して回収するためであったと考えられる。画としては情緒的に観てしまうが、探査機運用陣は地球資源の保護にも配慮しながら、科学的な成果を追求し、探査機本体を利用し尽くして納税者の期待に応える厳しい義務を果たしたのではないだろうか。そういうことを考えると、「砕け散る」よりも「ミッションを達成する(あるいはサンプルリターンの可能性の実証に成功する)」が妥当ではないか。ともし筆者がはやぶさ2担当主筆ならお小言を言うに違いない。
 はやぶさ2が次の10年の旅の後でどうなるかは、まだまだ今後の道のりで変わりうるのであろうし、素人が推測できるものでもない。サンプルリターンする容器は使い果たしたので、地球に帰還する必然性はないのかもしれないし、リアクションホイールが故障して姿勢制御のためにキセノンガスを吹かなければならなくなれば、帰還に必要な分も使い果たしてしまうのかもしれない。そういう時には訪問先の小惑星に着陸したままずっと定点観測データを送ってくるような長寿プランもご検討いただきたく思う。

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