本店新人研修

 昼から夕方までビデオ(代替)研修。題材としてCONTAGIONを使って、物語の進行とChapterの対照表を配り、scene to sceneで注釈をつけながら106分の尺を休憩を入れながら180分で鑑賞。
 この日のために4月から準備してきたとは言いすぎであるが、Chapter 8のシーンに関連してNGL viewerJonathan Corum and
Carl Zimmer: Bad News Wrapped in Protein: Inside the Coronavirus Genome, The New York Times Apr 3, 2020.
を紹介した。
 ワクチンの副作用について映画の中で記者会見で質問されている件など、引き続き調べているうちにContagionの医学監修を担当されたコロンビア大のIan Lipkin博士は、感染症対策の第一人者で、SARSの際には北京に派遣され自らも感染されたという。3月にリモート出演したTV番組で自らのSARS-CoV-2感染を告白されたとの報道があるが、回復されご活躍の様子なのにほっとする。
 製作後9年経っているが、Contagionの俳優がバーチャルで一同に会して感染拡大防止を呼びかけるControl the Contagionのページ(Columbia University Mailman School of Public Healthのクレジット)も、製作当時出演者をラボに招いて基本的な講義や演技指導をしたLipkin博士の働きかけによるのは間違いあるまい(道理でピペットや顕微鏡の扱い方などに違和感を感じないわけである)。concrete modernのような書体がすっかり気に入ってソースコードを眺めてみると、Avenirが指定されているようである。CEOは英会話スクールの教材に、英語のキャプション付きのをぜひ使ってみると言うのであるが、筆者は次の時間に日本語キャプションのついたこちらを使ってみたい。Contagionの世界観のままでこちらに遷移すると、観る人にはさらに刺さるかもしれない。DVDには「ウイルスの感染のしかた」という特典アニメーションが収載されてきたが、ぜひこちらに差し替えていただきたい。これからはネットで視聴になるからあまり余計な心配はしなくてもよいのであろう。

 WHOの活躍や国際協調という視点ではほとんど何も描かれていないのが、かの国の大統領はこのあたりの重要性に気がつかなかったのが不思議でならない。
 一方で映画のあらすじをまとめたサイトで、ウイルスと細菌を混同している記載もあるので、気をつけなければならない。「ウイルスを培養(または増殖させる)ことのできる培地が見つけられず、ワクチンづくりに進めない状況」というふうに書かれているのを見かけたが、ウイルスはもともと培地に入れて温めても培養できず、増殖もしない。必ず細胞の内部に入り込んで、細胞のタンパク合成機能や核酸複製機能を乗っ取って自分のコピーを増やして「増殖する」のである。ここは正しくは「ウイルスが感染しても死滅してしまうことがなく、ウイルス増殖の踏み台として適当な細胞」(映画の設定ではコウモリの細胞となっていた)を見つけることができなかった、ということになる。
 また、映画の演出ではヘクストール博士はワクチンを太ももに打つシーンから、すぐに感染した父親を見舞いに行く感動的なシーンに続くが、ワクチンが効いて感染防御免疫が成立するのにはさすがに週単位の時間がかかる。打ってすぐにウイルスに暴露したら感染してしまうということやワクチン治験の結果ですでに報告されている通り、ワクチンを打っても感染する人はいた(いる)事実は大事なポイントである。ワクチンが行き渡ったら瞬間的に元の状態に戻れるような希望というか幻想を抱いてしまうが、しばらくは様子を見ながら少しずつ警戒を解いていくしかなさそうである。
 安全でよく効くワクチンをすべての人類に行き渡らせるだけでも大変なことであるのは映画でも描かれている通りであるが、その成功率が低かったり、頻回に接種しなければ効力を保てないとどうなるか、これも杞憂に終わればよいが考えておかねばならない問題である。最近一度回復した人の再感染症例が注目されているように聞くのが気になるところである。

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