朝ドラのゆくえ

 今季の《スカーレット》は、スタート直後からコミットできたドラマであった。
 年度末にご退任になる地域の方に差し上げる記念のお品の調達のために某国内巨大オークションサイトでの情報収集を進めているうちに、《スカーレット》で陶芸指導にクレジットされている高山清子さん(番組オープニングでは「喜美子作品製作」になっているように思われる)の作品をヒロイン川原喜美子のモデルの作として紹介している出品者を見つけた。公式には「脚本家のオリジナル作品でフィクションであり、登場人物に特定のモデルは存在していません。」と明言されているが、あと2週間となったドラマの展開は、高山さんの人生からインスパイアされたものになることは間違いないと感じている。
 というのも、高山清子さんは、ご子息が1990年2月に慢性骨髄性白血病と診断されたことから、骨髄移植ドナーを探す活動を始め、日本における骨髄移植ネットワークの先駆けとなったというのである。残念ながら早世されたご子息の曜変天目茶碗も、オークションに出品されていることがある。当時研究のために日参して白血病細胞の培養をしていたラボでは、各地から診断依頼血液サンプルが送られてきていた。その中にひょっとすると賢一氏のサンプルがあったかもしれない。筆者の記憶では、NHK驚異の小宇宙人体の最初のシリーズ(1989年)で白血病治療のためにお姉さんからの骨髄移植を受けた患者さんが紹介されていた。
 組織適合抗原(HLA)は何種類かの対立遺伝子の組み合わせであり、父母それぞれの対立遺伝子の一方をシャッフルして受け継ぐので、兄弟姉妹であっても完全一致しないのが普通である。また、HLAはフェロモンでもあり、ヒトはより異なったHLAタイプを持つ人に惹かれると言われている。HLAはウイルスや細菌の抗原に対する免疫応答の強さも規定するので、より多様性のあるパートナーとの間に子孫を残すことが生存に有利であったであろうというのが定説なのである。その一方で、HLAが少しでも違う細胞は、免疫系が激しく拒絶するので、臓器移植や骨髄移植(移入された白血球が自分の細胞を異なるHLAを持つ敵として攻撃してしまう)の成功に関わる問題点となっていた。
 当時驚異の小宇宙人体では、アメリカのデータベースでヒットした同じHLAの人を訪ねていって、全く人種も違うのに組織適合性が合うという不思議を映像化しようとしていた。その10年後にプロジェクトX日本初の骨髄移植の成功例の紹介を拝見した記録があるが、その時に高山さんは登場していたのかもしれない。今なら自分のiPS細胞から骨髄を再生できるのかもしれないと、CEOに説明したら、ネタバレさせるなと怒られてしまった。しかし、「特定のモデル」はいないこの物語がどう進んでいくのか、予断はできない。注視していきたいものである。

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