SARS-CoV-2(旧称2019-nCoV)禍(2)

 当地でも中央区のご夫婦に家庭内感染が報告され、福岡市主催行事などの原則延期中止が決まり、振休返上で連絡調整のため出勤する週後半となった。ただし、こういう書き方はするけれど筆者は福岡市の職員ではないことを念のため書き添えておく。
 現在厚労省は、飛沫感染接触感染を避けるために咳エチケットと手洗いの徹底を呼びかけている。
 唾液の中のウイルスが咳やくしゃみの際に飛沫となって周囲に飛散したのが気道粘膜に到達して細胞内に侵入すると飛沫感染が成立する。マスクをつけたり、咳エチケットを守るのは飛沫感染で「うつさない」ための心がけとなる。その飛沫を直接吸い込まなくても、それの付着した指で粘膜細胞にウイルスが到達すると接触感染となる。こまめに手洗いをするのは接触感染で「うつらない」ための対策と言えよう。
 ところが、クルーズ船内で感染を検出された方がどんどん増え、高速道路の集金所や土産物店の店員さんなどにも感染が拡大している。退船前にはウイルスが検出されなかったはずなのにチャーター機で帰国後陽性になった方、感染者と会食した接触で感染した方、感染防御に心得のある医療関係者にさえ拡大しているのは、この分野素人の筆者にも、飛沫や接触感染では説明できないくらい深刻な空気感染のエビデンスなのではと訝しく思ってきたのだった。
 某国立大の教授がユーチューブで発信された情報は、国内では防疫対策の不備に対する批判の意味で捉えられたように思われるが、国外の関係者には、現在の感染拡大が、必ずしも飛沫核感染(空気感染)によるものではないことを明確な英語で発信するメッセージになってよかった。と個人的には考えている。
 後日記(2020.05.01)>この点に関しては、SARS-CoV-2ウイルスが短時間は飛沫核感染することと感染宿主に症状発症前からウイルスを排出させるという、なんともえげつない性質を持っていることから、大規模な自粛や三密を避ける行動変容で社会全体で制圧する呼びかけにつながっている。ただし、感染予防機材の不足は未だに深刻である。
 飛沫感染接触感染が主な伝播様式と仮定して、個々のケースの感染の機会を考えてみる。「咳エチケットを徹底し、こまめに手を洗う」という文章に込められた予防の真髄を考えるヒントとなればと思う。
 会食時の伝播については、どうしても食事のときにはマスクを外さざるを得ないことが飛沫感染のリスクを増やすのであろう。会食で会話が弾めばなおさら、飛沫が周囲の人に届くことになる。黙々と食事をとった後おもむろにマスクを付け直してから会話を愉しむのが情趣は損なわれるが健康リテラシとして定着するとよいのだが。
 また、咳エチケットの同工異曲になるかと思うが、大皿からの料理を自分の箸で取り分けると、唾液で汚染され接触感染のリスクになるし、いわゆる二度漬け禁止の徹底も同じ意味で必須である。このあたりは(たとえうつっていなくてもうつっているつもりで)「うつさない」ための行動を心がけたいところである。
 クルーズ船や屋形船では揺れた時に掴まる手すりが接触感染源として指摘されてきた。同じように電車の吊り革、ドアノブやエレベータのボタンなど多くの人が無意識に触れるところは汚染されやすく接触感染の接点となることは注意しておくべきで、触れたら手を洗うことが必要である。しかも汚染している(かもしれない)指先(や触った部分の皮膚)をきちんと洗うことが重要である点は言うまでもない。
 早い段階で観光バスやタクシーの運転手さん、バスガイドさんの感染が見つかって、同じ閉鎖空間に乗り合わせることのリスクがクローズアップされてきた。運転手さんと日常的な接点を持つ料金所の職員さんは、ふだんからマスクを着用されるお仕事のように拝見する。ガーゼマスクでは飛沫感染を完全には防げないが、開放空間での短時間のやり取りの中に感染の濃厚なリスクはあるのだろうか。料金収受の際の汚染された硬貨からの接触感染はどうだろうか。ドライバーの手やドライバーズグローブの触れる車のハンドルや小銭がウイルスの踏み台にされていないか、現金を扱うご職業の方は注意が必要かもしれない。今までのところ銀行の方の感染は報告されていないように思われるので、意外と安全なのだろうか。中国では紙幣の消毒に着手されている情報もある(が、日本では紙幣はATMの中でシワ伸ばしのために加熱されているような話を聞いたことがあり、そういうことが感染抑制に思わぬ効果をもたらしているのかも?カッコ内は筆者の推測にすぎない)。
 家族内の接触感染のリスクについては、タオルや歯ブラシの共用をあげておくべきかと思う。顔を洗って使ったタオルには、微量の鼻水や唾液が付着しているので、タオルは個人で分けなければ危険である。また、歯ブラシの共用はありえないのかもしれないが、唾液や気道分泌液中のウイルスを口の粘膜に持ち込むリスクになるので個人使用が原則である。
 後日記(2020.02.25)>政府は第13回新型コロナウイルス感染症対策本部会議で対策の基本方針を決定した。この中で、現在「空気感染は起きていないと考えている」が、「閉鎖空間において近距離で多くの人と会話する等の一定の環境下であれば、咳やくしゃみ等がなくても感染を拡大させるリスクがある」としている。それにしても、韓国やイタリアでは恐ろしくなるようなスピードで感染者数が増えている。
 

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