もう三十年近く前のことになるが、筆者は二年間奉職していた施設で技官のシゲさんと知り合った。
休斯頓から持ち帰った石灰岩を差し上げたら、その一部を砕いて蟲明焼の猪口を焼いてくださった。
それで焼き物にも手を出す手先の器用な好々爺だと思いこんでいた。
紙箱に入れてくださった作品は、爾来四回の引っ越しで行方不明になっていたが、ついこの間台所の戸棚で再発見した。
厚手の、ドリルのビットの先端のような造形になっているのに今さらながら惚れ惚れとする。
最近ヤフオクで競り落としたご子息の作品の栞を拝見してみるに、シゲさんは実に廃窯の再興の祖なのであった。
昨晩寝ている間に、ご子息の抹茶茶碗をまたひとつ落札。