彫像を撮影する際に、広角レンズを使ってあまりに接近しすぎて撮ると、場所によってレンズからの距離が異なることから全体のバランスが変わる。これはある程度焦点距離の長いレンズを使うことで目立たなくできるが、高い台座の上の彫像を見上げるようなカメラアングルでは、爪先と頭の上端との距離の違いが全体のバランスを狂わせるとともに被写界深度から外れてしまうリスクも出てくる。
これらを補正して撮影するために、シフトやティルト可能なレンズがある。
キヤノンからはTS-E EF 17, 24, 45, 50, 85, 135 mmのシリーズが、ニコンではPC-E Nikkor 19, 24, 45, 85 mmとPC Nikkor 28 mmが現行品として出ている。サードパーティからのものは、調べた限りではSamyang T-S 24 mmもあるということだ。電子制御以前のシフトレンズとしては、24 mm F3.5が、オリンパスOMシリーズ向けZUIKO、 28 mm F3.5がPC Nikkor、Pentax A、35 mm F2.8が、ZUIKO、キヤノンFD TS、PCディスタゴンT*で出ていた。
野良営業のクライアントの古民家の研究者の方がフィールドで記録用に必携であるとうかがったことがあった。
現行品は純正ボディにつければオートフォーカス、絞りも電子制御で使えて、シフトもティルトもできるので便利である。
一方、TS-E EFレンズについては、ボディからレンズへの信号を変換するマウントアダプターが出ているのを利用して、Sony α7のフルサイズのセンサーでの画作りを勧めるページも見かける。
中古ではTS-Eの方が安く買える印象ではあるが、それでもやや難有り品で6万円はする。
手持ちのNEX-5Tで使うとして、絞りリングのない(電子制御オンリーの)EFレンズを従来のマウントアダプターを介してつなぐと、絞りは開放で使うしかない。さすがにそれでは背景に明るさがあるところでブラック・アウトした撮像をするのが難しくなりそうである。また、場合によっては被写界深度が足りなくなるかもしれない。最近登場した電子接点付きのマウントアダプター(例えばmetabones MB_EF-E-BM3)を使うと、EマウントカメラボディからEFレンズを制御できて、なかなか使えるシステムになりそうなのであるが、10万円に迫る投資となる。
もう一つのアプローチは、シフトティルト(またはシフトのみ)可能なマウントアダプターをかませて、普通のレンズをシフトティルト(またはシフトのみ)レンズ化してしまうということだ。現在のところ、Nikon FマウントレンズをSony Eマウントカメラにつなぐアダプターしか入手できないため、Nikkorレンズの中から選んで使うことになる。こちらの方が様々な焦点距離のニッコールレンズを選べて応用範囲が広そうに思われる。フォーカスも露光制御もマニュアルになるが、「雨の夜の彫刻写真」を撮るには向いているようにも思われる。
KIPON ニコンFマウントレンズ - ソニーNEX/α.Eマウントアダプター アオリ(ティルト&シフト)機構搭載 T&S NIK-S/E(T&S NIK-NEX)
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