渋川市美術館・桑原巨守彫刻美術館


 そしてたどり着いた五叉路に渋川市美術館・桑原巨守彫刻美術館がある。群馬銀行の建物の一部を改修して借用しているのだそうだ。桑原巨守作品は、筆者にとって遠い存在ではない。彫刻作品を初めて意識して撮影したのは福銀彫刻の庭の桑原作品《ファーコート》であった。また、東の道に面した際に《野の花》もあった。残念ながら《野の花》はずっと逆光で、鋳肌が地黒なこともあって何だかはっきりしなかった。
 彫刻美術館に入ると、等身大を越えるような大作が林立していて、圧倒されるのであるが、感激したのは光線の良さである。南向き磨硝子の窓から柔らかい秋の日差しが館内を明るく照らしていて、まさに彫像に光が回っているのである。写真撮影が禁止されているのは残念であるが、野外展示とは異なった魅力がある。
 圧巻であったのは、《明るい眸》と《夏》、《朱鷺のように》と《新頌麗陽》のペアである。これらは裸のマヤと着衣のマヤのような双子の関係にある。説明に曰く、桑原氏はまず裸体の彫像を造り、それに粘土の服を着せていったのだと。そこで、中間産物として裸像ができたのかというとそうでもなくて、服を着せるにあたっては、バランスを調整するために新たにもう一体作ったものがあるというのである。それらのペアが並べてあって、まさに見比べられるようになっているのである。筆者は、桑原氏の造型にかける執念にも、それをこうして見せてくださるキュレーターにも脱帽した。
 ただし、所蔵作品の写真集を拝見しているうちに今回の展示には《森の花》がないのを残念に思った。そのことをお話しすると、市民会館のロビーにあるとおっしゃるのである。

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