最後の最後にはやぶさ探査機本体が見せた、フィクションを超えた科学の美しさと厳しさ

 はやぶさのサンプルカプセルの地球帰還は、先週NHKクローズアップ現代でも、今朝のスパモニでも取り上げられていて、遅刻ぎりぎりまで見てから出社したのであった。なぜこのように取り上げられるようになったのかというと、これは大ヒット中のプラネタリウム作品が、CGアニメーションでどなたにもわかりやすい形ではやぶさの旅路を紹介したことが大きいのではないだろうか。事実、最近の報道の殆どは、このアニメーションを「引用」して作られている。要は、これなしでは間が持たないわけで、百聞は一見にしかず、と言い換えることも可能であろう。
 ただし、探査機本体が大気圏上層で焼滅するアニメーションは筆者の知る限り見たことはなかった。満天の星空の中で星になったことは松浦氏のL/Dで事実としては知っていたのだが、いざプロが撮ったカプセルが一直線に飛んでいく真上で、小爆発を繰り返して飛散していく機体の姿を観ていて不覚にも泣けてきた。厳しいけれど、ニュートン力学流体力学の帰結である。そしてもしこれがイトカワクラスの小惑星だったら、恐怖の大王が天から降ってくる大惨事になる想像力を失ってはならないことが、筆者にとっての最後の戒めになったような気がする。
 多分に情緒的にわかった気になって棹さしてしまうのは筆者だけかもしれないが、それでも気になるのは、苦難を乗り越えて地球に帰還し着陸したこと(これだって立派な世界初なのに!)をプロジェクトX的ヒューマンドラマとして紹介はするが、成功か失敗かは「石が入っているか入っていないか」だけでしか決めないことで足並みを揃えた報道姿勢である。
 アポロ計画で宇宙飛行士の宇宙服は月面の微粒子で真っ黒に汚れていたのを思い出すのであるが、地球の1/6の重力でもあのくらい舞い上がるのであるから、ほぼ無重力イトカワならああいうナノパーティクルくらいのものは飛び込んでいるのではないかというのが筆者の予想である。緊急離陸したときにどっさり流出してしまった心配はあるが、たとえ1個でも、得難い試料であることにはかわりはない。Stardust計画の彗星の塵と同等の分析は可能であろう。と考えると(予想が甘すぎるかもしれないが)、石が入っていたかどうかというより、分析可能で論文になるブツを回収できるかどうかがポイントであろう。まずは、無事にカプセルが見た目無傷で回収されたことを喜びたい。
 後日記:NASA Ames研究所の飛行機から撮影された大気圏再突入時の映像である。彼らが情緒に流されていないのは、ちゃんとリエントリカプセルを画角の中に捉え続けていることでわかる。これをiPhoneでいつでも再生できるようにしておく。[はやぶさリンク]

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