επιστεμη創刊準備号、篠山紀信写真塾 『跳んでごらん』

 επιστεμη創刊準備号はたったの100円であった。高校生の頃、こういう難解な文章を読んで、一回では意味がわからず、二回目で頭痛がして、三回目には熱を出して寝込みそうになりなっていたわけであるが、天命を知る年にもなるとこれが悪文であると見破れるようになる。いや、文章の方に責任を押しつけて自分の読解力のなさに目をつむるだけのずうずうしさが身についたというべきか。
 篠山紀信写真塾 『跳んでごらん』は、なぜかセロハンで包んであって表紙にはハイキックしている中学生らしい男子を撮っている篠山紀信氏が写っているのだが、開封して読んでいくうちにそのモデルが実は富田靖子さんであることが判明、一驚を喫す。
 様々なシチュエーションでの撮り方指南というアプローチ(すなわちハウツー本の体裁)で構成された本なのであるが、モデルは当時のアイドルで、一世を風靡した「激写」の未発表作品なのではないかと思われる。本文中で紀信氏は「アイドルはその時代精神を映す鏡であるから、長年撮り続けることは時代を記録していくことにつながる(筆者意訳)」と述べておられる。筆者は、もうひとつの座標軸に沿って、可憐なアイドルの写真一葉一葉に女の一生とでも言うべきリアリティを見るのであるが、本書の出版22年後の鑑賞法としてはあまりに意地悪にすぎるか。
 

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