ダイアローグの伝統

 今年のノーベル化学賞ローリエートの吉野彰さんが化学を志したきっかけは《ロウソクの科学》を読んだことであったという。
 多分、その次に夢中になってむさぼり読んだのがオストワルド《化学の学校》で、その次が岩波講座化学に違いないと自分にひきつけて勝手に考えている。
 松岡正剛氏の「千夜千冊」では、《化学の学校》がガリレオ・ガリレイ《新科学対話》以来の伝統を踏襲して書かれていると紹介されていて、つい岩波文庫の復刻版を購入したのであった。これは1937年初版の舊字体舊かなづかひ(舊は旧の旧字体)の復刻版なのでいまどきの高校生には敷居が高そうである。受領してから積ん読していたが、ふと「對話」(對は対の旧字体)書き出し部分の登場人物の紹介が何かに似ているなと思ったのであるが、しばらくたってそれがゲエバー本のアキレスと亀の対話であったことに気がついた。ホフスタッターもまた伝統を踏襲しているというべきなのであろう。
後日記>投稿してから、20周年記念本の表紙の図柄とギンカクラゲが何か呼応しているように見えるのに気がつく。が、ギンカクラゲの感触体はコバルト色であるが、かの表紙に描かれているのはeternal golden braidである。
後日記>さらに、松岡正剛氏の「千夜千冊」を引用して、伝統の下流にストング編《アマチュア科学者》や小槇孝二郎《流星とその観測》などがあるのかもと9か月前に書きつけたこともすっかり忘れてしまっていたこと、そして、伝統の純系の子孫の一つに竹内郁雄《初めての人のためのLisp》を追加すべきと気づいたことをを告白しなければなるまい。

 
 

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