ムーミン谷の所在国

 センター試験は、全国の受験場で均一平等の条件を担保して実施される試験である。受験生のご家族の意向を忖度してなのかどうか、マスコミの報道は過敏で、監督者のいびきで思ったようにできなかったとの苦情に対して、教授を訓告処分にした会場や英語リスニング中に監督者のスマホのバイブレーションが鳴動して集中できなかったとの苦情が寄せられた(が日常環境の騒音のレベル内との判断で再試験はしない)ことも取り上げられている。
 なかには、全国で開始時刻が繰り下げられた受験場がいくつあったかということまで報じているところもあるようだが、開始時刻の繰り下げは、受験者に同じ条件で受験してもらうための配慮で、異常な事態ではない。解答時間が正確に確保されることが何よりも大事であるのだが、ただでさえ忙しい受験場に本来の試験遂行業務以外の対応を強要するのは業務妨害に当たらないのだろうか。
 一方で、もっと取り上げられてよいのが試験の内容であろう。今年最も、というか唯一注目されている問題は、ムーミンの舞台についてフィンランドを正解とする出題で、根拠が薄いとか、知識思考力を問う設問として支障はないとか、いろいろと議論があるらしい。というのがファーイーストの受験狂想曲として北欧のメディアにも取り上げられているらしい。
 大変申し訳ないが、「(ムーミンの舞台が)どこにあるかなんてささいなことだと思うだろうが、学歴社会の日本で大学合格に関わるとなれば、受験生にとっては人生を懸ける一大事だ」というヘルシンギン・サノマット紙の健全な考え方には、なにかほっとした。たとえていうと、勉強しなさいとガミガミ言わない10才年上の叔母のコメントのような感じであろうか。
 とは言え、受験生が人生を懸けて解く問題の背景を掘り下げ、設問の内容に議論が深まるのは大変素晴らしいことであると思う。マスコミの記者のみなさまには独自の取材を通して、ぜひムーミン谷問題だけにこだわらず今年の問題にまつわる記事をお願いしたい。
 筆者は、益田市の海岸賢治ゆかりの地ますむら・ひろし氏ゆかりの米沢市を訪問したが、これで《柿本人麻呂終焉の地》、《イーハトーブ》や《ヨネザアド》を訪れたと思っているわけではない。むしろ、《イーハトーブ》や《ヨネザアド》は40年も前からわが心のうちにある。
 やぢうまの聖地巡りと一緒にされてはかわいそうであるが、今後もこういう傾向の問題が出題されるかもしれないとのことであるので少し補足しておくと、「ヨネザアドアタゴオル」の入り口は、酔っぱらいたちの消えた町(米沢市?)のNeco Cola自販機の隙間をくぐり抜け、洞窟を進んだところにある。詳しくはアタゴオル物語第1話を参照されたい。

本ブログではamazon associate広告を利用しています。