昼すぎにNHK特集「どんなご縁で 〜ある老作家夫婦の愛と死〜」(初回放送 1988年10月23日 45分)を拝見する。認知症を発症された奥様を老々介護しておられて舌がんでお亡くなりになった老私小説作家耕治人(こう・はると)氏とその奥様とのドキュメンタリーである。
どんなご縁でこういうめぐり合わせになるのか、ちょうど昨日の朝日新聞折々のことばに紹介された《そうかもしれない》は、その舌がん入院中に養護施設入居中の奥様が面会に来る時のことを書いた小説なのである。何度も介護者から「ご主人ですよ」と説明されて、奥様が呟かれた言葉「そうかもしれない」がタイトルになった由。
虚弱のtrajectoryには個人差があり、同じ個人でも能力間にも違いがあるということを痛感する。どの能力がどのタイミングで弱り始めるのかを運命と言って、厳粛に受け入れるべきと押し付けてしまうのはあまりにも過酷な話である。その一方で、我々は介護予防と称して何とかしてその運命を先送りしようとしているわけであるが、先延ばしの未来に何を期待すべきなのだろう。ということについては、科学的にも哲学的にも検討が必要である。
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後日記(2021.09.11)キーワードでの録画予約が作動して9月8日にBS Premiumで再放映があったことに気がついた。不注意で7倍速での録画になってしまったが、VHS版を観てきた筆者の目には明暗のダイナミックレンジが広がり、微細なところまでよく見えるようになったことがわかる。予約を修正して等倍速録画のチャンスを待つ。