人工衛星を意識したグラフィティ

 子供の頃、祖母の家からの帰り道にあった変電所の脇を通ると、いつも唸るような音が聞こえたものであった。父親はその音の高さは60 Hzであると言ったが、真偽のほどは定かではない。日曜日の夜、どちらかといえば、遊びすぎて宿題に全く手がついてなくて、少なからず後悔している時に限ってその音を聞くので、子供心に反射的条件付けができてしまったのであろう、いつ通りかかっても何か時間を無駄にしたことを責められるような気分に駆り立てられるのであった。
 今、当地の変電所は、敷地の中にトランスと碍子が屋根なしで据えてあるような所が多く、ハム音の印象は希薄である。思えば、あの変電所のコンクリートの建物では、変圧トランスの冷却のためのファンが常時作動していたのかもしれない。さて今も健在であろうかとGoogle Mapで調べてみると、おそらく記憶の位置と一致する、蒼社川の土手からゆるゆると下る坂の中ほどにまだあった。四国電力泉川変電所というのがその名称で、周囲の建物も40年前とそれほど変わってはいないように思われるのである。ただし、人工衛星を意識したグラフィティは当時あるはずもなし。

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