フィールドノート

 東北地方太平洋沖地震から10日目を迎え、津波で押し流された家の中からの高校生と80歳の祖母との奇跡の生還がマスコミに大きく取り上げられた週末であった。
 そういう時期に、不謹慎きわまりないけれど、草下英明:鉱物採集フィールド・ガイド「10 岩手県崎浜のリチア電気石」で取り上げられていた民宿「あづま」のご消息が気になるのである。みごとなリチア電気石をご所蔵であったという記載を拝見して、いつかは訪ねてみたいと心がけて久しかった。草下氏のスケッチと写真からは波打ち際から道を隔てて、石垣の坂道を登ったところに建っているように見える。
 現地で細かくメモやスケッチをとるための「小型でかんたん、丈夫な」フィールドノートとして、はたして草下氏が測量野帳スケッチ セ-Y3を使ったかどうか、確認するすべはない。が、昭和36年発売以来のロングセラー商品であるということなので、時代考証としては草下氏の鉱物採集家としての活動時期(1950〜92年)にオーバーラップしている。
 野鳥を撮る―撮影に成功する実戦テクニック (1981年) (フォトアート写真入門)の中で著者吉野信氏は、「ポケットに出し入れしやすい大きさの、ビニールカバーのついたもの」が最適であると書いておられる。オストリッチダイヤ測量野帳を念頭におかれたものであろうか。鳥見限定ではBIRDERフィールドノート、地学関連では(こちらの記載をたどって)地団研特製フィールドノートを見つけた。もちろん、テラハウスの日本地質学会の金箔押し表紙もの(山梨県産)岩本鉱産物商会(東京都産)ニチカの地質野帳(京都府産)と産地によってバリエーションがあるのも面白い。いずれももともと手帳のたぐいなのであるからそれほど高いものではない。むしろそこに書きこむ観察スケッチや経験(とその蓄積)が宝物なのであるから、ノートそのものは指輪の台のようなものでしかないが、そのコンテナにまた独特の魅力があるわけだ。
 それで、ふと思い立って、フリーでダウンロードできる天気図記入用紙があるのかどうか捜してみた。流星観測星図日本流星研究会ホームページから、双眼鏡用の滝星図7.5等級までのMag 7 Star Atlasもダウンロードできることはかなりありがたいことで、ついそのノリで甘えてしまうわけであるが、結論から言うと、高校生の頃しごかれた記入用紙にそっくりのものはないようである。地形の輪郭と観測点の位置の小丸がプロットされていればよいので、Rで書けそうな気もするが、今のところはラジオ用天気図用紙 No.2を購入するのがよさそうである。まあ今ならプロの手で記入ずみのものをダウンロードするというのが一番お手軽かもしれない。
 フィールドノートに関する網羅的な記事をこちらに発見。ニチカのフィールドノートが京大ミュージアムグッズになっているとは、この間はやぶさのカプセルを見に行ったまん中の子も気づいていないようである。[野外活動]

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