小林多喜二:蟹工船、葉山嘉樹:セメント樽の中の手紙

 若い人は近所の本屋さんで買ってきた小林多喜二蟹工船を読んでいたそうで、最近ブームなのだとか。そういえば、三省堂書店でもエレベーター上がり口に平積みしていたなと今さらに思い出すのである。若者の活字離れが喧伝されてはいるが、この時代にプロレタリア文学が受け入れられているのがなぜかについては現在のところコメントできるほどの知識なし。
 ただし、美術館の展示室の隅で読む本としては、「蟹工船」は激しすぎて、つい休日なしで徴用されている自分の人生に重ねてしまったりしかねないのが心配であるが、若い人の読後感は自分よりも悲慘な人生をそこに見たということであった。
 筆者なら葉山嘉樹:セメント樽の中の手紙の方を推したいところである。高校2年の頃、Z会の機関紙に紹介されて、新潮文庫に収載されているのを探し出すのに苦労した記憶があるが、今なら青空文庫で鑑賞可能である。ただし、午前午後8時間の長丁場ではすぐに読了してしまって退屈であったかもしれない。[本]

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