CDの仕様を決めるときに、いまはなきカラヤン氏の「私が振る≪運命≫がおさまるように」と言う鶴の一声で70分700 MBという容量が決まったとか聞いたことがあるが、このCDは、そのカラヤン氏の執念の賜物というべきか、トータル69:21の演奏時間という、まさに仕様ぎりぎりまでマスタリングされたCDである。
≪展覧会の絵≫は、もともとピアノ組曲で、のちにラベルがオーケストラ用に編曲したものも人気がある。このCDはカラヤン氏がベルリンフィルを振って1966年に録音したオーケストラ版と、ラザールベルマン氏が1979年に録音した原典版をグラモフォンがテープをつないでデジタル化した一粒で二度美味しいカップリングCDである。以前発見したときには、7枚組みCDの購入を優先して、10月には同時購入した試験対策本を優先するためにキャンセルしてしまって、このたびやっと手に入ったCDである。
ベルマン氏がこの曲をどう弾いたのかという方にどうしても興味があるので、カラヤン氏の方はおいといてCD半ばに針レーザーピックアップをおろすのである(この表現もすでに死語であろう…)。
1979年といえば、筆者がチケットを買った公演が糖尿病のためにキャンセルされた頃である。筆者のスタンダードはホロビッツ氏のモノラル録音であるが、それよりも録音が少し新しく分解能も高い分、それぞれの曲の細かな表情まで聴こえる。テンポの動かし方も実に細やかであるし、豪快に弾きまくる一方で、微音もまたしびれるような美しさである。はじめて聴くのになんとなく懐かしい曲を聴くような感覚で、≪キエフの大門≫まで一気に聴き通す。[音楽]