大学6年生の冬、千里中央の本屋に売れ残っていたモノンクル6号を買った。故郷の一六タルトのTV CMに出演していた伊丹十三氏責任編集の雑誌であったが、1981年7月に創刊し、その年の12月創刊6号にして休刊してしまい、復刊することはなかった。
モノンクルは筆者に阪急電車箕面線桜井駅前の商店街の賑わいを思い出させる。その中の露店のような本屋さんでこの雑誌が売られていたのである。
筆者が買ったのはその休刊後1年近く店晒しになっていた6号であるが、何度も何度も繰り返して読んだ。ますむらひろし氏のアタゴオルの漫画との出会いともなった。そして家具の記事で紹介されていた「赤と青」には感銘を受けて、図面を起こして隣りのホームセンターで板とペンキまで買って背もたれまでは作ったのだった。直交座標系の中の平面として構成されていて、背板座面の長さはピタゴラスの定理で計算したものだった。
こんなにユークリッド幾何学の模型のような椅子で果たしてくつろげるのだろうかと心配になるのだが、実に快適な座り心地と紹介されていたように記憶する。その後このトンがった意匠をおしゃれな家具屋さんや高校の工作室の前に置いてあるのも目撃したことがあるが、今どき50万円ほどで販売されているという。思いついて検索してみると、今やオリジナルの設計図までもダウンロードできる。素晴らしい時代になったものである。そのうち再挑戦する時が来るだろうか。
さて、モノンクルを創刊号から読むためには国会図書館に赴かなければならなかった。6号すべてをコンプリートできたのはついこの間のことである。