天体画像の処理の「ストレッチ」とはー 微光の天体を撮影して得られた、非常に暗く、真っ黒にしか見えない画像を、背景ノイズを抑えつつ星雲や銀河を強調し、視覚的に見やすい明るさに引き伸ばす非線形変換処理のことである。
筆者が使用している天体画像処理の定番ソフトウェアPixInsightの開発チームから新しいストレッチツールのお知らせが届いて、ソフトウェアには自動的にインストールされ、いつでも使えるようになっている。
筆者のような初心者でも使えるのか?とおっかなびっくり試してみたら…一撃でここまでくるとはすごい!と驚く仕上がりであった。

左半分にbefore MASのリニアな元画像を、
- 使用画像:200枚インテグレート済(総露光時間100 min)
- 前処理:WBPP (script); Multiscale Gradient Correction
- 色調整:Spectrophotometric Color Calibration
右半分にafter MASの驚異的なプレビュー画像(MASのプレビューボタンを押しただけで数秒で表示されたもの)をbefore/afterしてみた。
よく見ると、筆者のレシピで
- 星画像と銀河画像の分離:StarNet 2
- 分離した銀河星雲画像と星画像の彩度調整: Curves Transformations
- 微細構造のWavelet変換強調:À Trous Wavelet Transformation
- ダーク構造の強調: Enhance Dark Structure (script)
- ストレッチ: Generalized Hyperbolic Stretch
- バックグラウンド調整: Histgram Transformation
- 分離した銀河星雲画像と星画像の合成: PixMath
最後のバックグラウンドの調整のときに「殺して」しまう周辺部の淡い渦を、MASはもう一回り大きく描出していることに気づかされる。
MASのパラメーター設定パネルには、À Trous Wavelet TransformationやCurves Transformationの彩度調整スライドボリュームがおまけで全部盛りされている印象で、Stretchツールにはおなじみのヒストグラム表示がない。と言うか、たったこれだけのパラメーターでここまでできてしまうと魔法のように思われてしょうがない。

筆者のレシピで処理したのと比べたら、星がうるさすぎるとか、銀河中心のオレンジの色味や渦の間の暗い褐色部分はもう少し濃いめに仕上げたいとか、いろいろと気になるところはある。がそれは上掲のツールでレタッチすればよいだけとも言える。
MASは、シンプルでありながらデータの機微を愛おしむようにストレッチしてくれて、シングルツールで完結するので処理の再現性も担保されており、素晴らしく頼りになる印象である*1。
満月が欠けていくのを待つ間に、過去のデータを片っ端からMASでストレッチしてみようと考えている。
後日記(2026-02-11)>
ngarts.hatenablog.jp
*1:従来の工程では、複数のツールを順番に使って、満点の処理を積み上げたつもりで同じ結果にならないことも多かった。